令和6年度 広島県昇給予測と人材確保戦略|過去5年間の求人賃金の推移から読み解く
今年も昇給時期がやってきます。
他社の動向が気になっている経営者や人事担当者が多くいらっしゃるので、公表されているデータをもとに賃上げの状況を確認してみます。
広島県の令和6年度昇給予測
東京商工リサーチ(広島支社)が管内の111社から得た回答結果を公表しました。
〇今年の春闘で賃上げを実施予定:82.8%
賃上げの予定
>去年を超える賃上げを実施予定:9.9%
>去年と同程度の賃上げ実施予定:50.5%
>去年の賃上げ実績を下回る予定:22.5%
人材確保や待遇改善のためには避けて通れない様子が伺える一方で、物価高騰など収益が圧迫されており賃上げが難しいと考える企業も多いようです。
参考記事:定期昇給とベースアップの違いを解説!人事コンサルタントのワンポイントレッスンを読む
参考記事:ベースアップの具体的な進め方と「次の一手」を読む
ベースアップをどう考える
まずは、広島県の過去5年間の賃金水準の推移をデータに基づきながら確認してみましょう。
広島労働局が毎月公表している「職業別有効求人・求職及び賃金の状況(常用)」から過去5年間の4月公表データを一覧表にしてみます。
求人賃金と求職賃金の推移
平成31年4月 | 令和2年4月 | 令和3年4月 | 令和4年4月 | 令和5年4月 | |
職業計 | 有効求人倍率 1.60倍 有効求人 41,184人 有効求職 25,687人 求人賃金 上限額 251,091円 下限額 189,173円 求職賃金 203,189円 | 有効求人倍率 1.30倍 有効求人 33,782人 有効求職 26,008人 求人賃金 上限額 260,706円 下限額 194,073円 求職賃金 208,319円 | 有効求人倍率 1.16倍 有効求人 32,837人 有効求職 28,246人 求人賃金 上限額 260,292円 下限額 194,495円 求職賃金 207,318円 ※参考値 (令和3年平均) 206,948円 | 有効求人倍率 1.26倍 有効求人 35,091人 有効求職 27,789人 求人賃金 上限額 262,362円 下限額 197,934円 求職賃金 207,537円 ※参考値 (令和4年平均) 209,169円 | 有効求人倍率 1.33倍 有効求人 36,161人 有効求職 27,232人 求人賃金 上限額 264,820円 下限額 201,945円 求職賃金 246,870円 ※参考値 (令和5年平均) 219,676円 |
広島県労働局 「職業別有効求人・求職及び賃金の状況(常用)」はこちらから
過去データの比較をまとめてみる
求人賃金(上限額 / 下限額)、求職賃金のいずれも同程度の上昇となっています。
比較指標 | 比較データ | 増減額 |
求人賃金(上限) | 平成31年4月データ / 令和5年4月データ | 13,729円 |
求人賃金(下限) | 平成31年4月データ / 令和5年4月データ | 12,772円 |
求職賃金(年間平均) | 令和3年年間平均データ / 令和5年年間平均データ | 12,728円 |
最低賃金の推移
同じように最低賃金も確認してみます。
平成31年 | 令和2年 | 令和3年 | 令和4年 | 令和5年 | |
全国平均 | 901円 | 902円 | 930円 | 961円 | 1004円 |
広島県 | 871円 | 871円 | 899円 | 930円 | 970円 |
令和2年度は新型コロナ感染症の影響もあり、最低銀陳の引上げも見送られましたが、その年度分を取り返すかの勢いで大幅な引き上げが行われています。
このように、令和に入ってから賃金の上昇は継続的に行われており、特にアフターコロナに入ってからは大幅な引き上げが行われていることが分かります。
参考記事:定期昇給とベースアップの違いを解説!人事コンサルタントのワンポイントレッスンを読む
参考記事:ベースアップの具体的な進め方と「次の一手」を読む
人材の確保、定着の観点から考察する
人材の確保、定着を念頭にベースアップを検討している企業にとって、「相場感」は重要です。
各職種や地場の相場を踏まえ、求職者の動向に合わせたベースアップ戦略を考える必要があります。
ベースアップ戦略
〇相場と比較し下回っている場合
人材の確保、定着の観点から一定のベースアップを検討する必要があります。
相場を踏まえ、短期、中期でどの程度の賃上げを実現していくか、既存社員の賃金分布を考慮しながら決定しましょう。
〇相場と比較し上回っている場合
ベースアップは喫緊の課題とは言えないため、賃金以外の就労条件の見直しに着手すると良いのではないでしょうか。
若手社員の就労意識の変化に合わせて、ワークライフバランスを実現するための業務革新を実現し、採用・定着面で優位性を持つ施策に取り組むことをお勧めしています。
年間休日日数や時間外労働時間の削減といった取り組みや、有給休暇の消化率向上、有給休暇を取得しやすい仕組みづくりなど賃金以外の優位性を高めることが、結果的に 会社の生産性を向上させ、更なる賃上げを可能とする財務基盤作りにもつながってきます。
キャリアアップ戦略も重要
また、就労条件だけでなく、社員のキャリアアップをサポートするための施策の整備も重要な課題です。
これからの潮流をふまえ、教育訓練制度を見直し、研修や資格取得を後押しする環境整備など、人材への投資計画をしっかりと検討し、人材の活性化=組織の活性化を実現していきましょう。
当社でお手伝いできること
2004年の創業以来、一貫して中小企業の人に関する問題解決に特化したコンサルティングを提供しています。
ベースアップは既存社員とのバランスが重要です
ベースアップは既存社員とのバランスを見ながら取り組まなければ成功しません。
既存社員向けの賃金制度の見直し、整備も合わせて取り組むことで、ベースアップを確実に人材の確保・定着につなげていきましょう。
これらのサポートは当社へお任せください。
ベースアップの前に、社内の賃金分布を確認し、賃金カーブの問題点を明確にする。
問題点を踏まえ、効果的なベースアップ戦略を立案し、人件費の上昇予測をしっかりと行ったうえで賃金制度の見直しも合わせたベースアップをサポートさせて頂きます。
賃金以外の施策も重要です
人材を人財に変えるための仕組みづくりにも取り組まなければ人材の確保・定着は成功しません。
これからの事業展開や業界の動向も踏まえ、教育訓練制度を見直していきましょう。
また、業務マニュアルの整備や社内資格制度など、制度の整備だけでなく社内で人材が育つ仕組みづくりも重要です。
これらのサポートは当社へお任せください。
AIを活用したマニュアル作りから社内資格制度の整備まで、しっかりとサポートさせて頂きます。
投稿者プロフィール
- アパレル会社勤務後、2000年、中小企業診断士資格取得と同時にコンサルタント会社に転職。営業(販促)支援、個別対応型管理者育成、業績管理制度構築・運用といった現場実戦型コンサルティングを中心に中小企業の支援を行う。その活動の中、経営者の方針=想いを実現させるためには従業員がやりがいを持って働ける環境を整備することが不可欠であると痛感し、会社と社員が共存共栄の関係を築ける「人事制度改革」に特化した中小企業支援を自らの専門領域として確立する。